FILE03.松田高加子さん(街の先生)
今回は、シブヤ大学の公募枠から誕生した記念すべき最初の「街の先生」、松田高加子さんにお話をお聞きします。10/21(土)にケアコミュニティ・美竹の丘(渋谷区)にて開催された授業「新しい映画鑑賞法のススメ〜目をつぶって、映画を観よう!〜」には、92名の方が生徒として参加し、参加者の方から大きな反響を得ました。 映画をコミュニケーションツールにして視覚障害者と晴眼者の垣根を取り払いたいと、「音声ガイド」など視覚障害者の映画鑑賞環境を整える活動をされている松田さん。応募のきっかけから、授業当日のエピソードなどをお聞きしました。
Q:
松田さんがシブヤ大学を知ったきっかけは何でしたか?
松田:私の知り合いが代官山でnara cafe*というイベントをやっており、そこで渋谷区議の長谷部健さんが、まだ正式始動前のシブヤ大学の構想についてお話されていました。行政が場所を提供し、企業が支援して、マンパワーで動かすという構図にとても共感したのを覚えています。
街の先生募集についてもその時に知って「チャンスがあるのなら、挑戦してみたい」と思いました。丁度その頃、私はあるジレンマ・・自分の活動を友人達に積極的に伝えられず→伝えないと知ってもらえず→知ってもらわないと普及しないという事に悩んでいたところだったので、シブヤ大学のような、若者を中心にして街全体を巻き込む形のコミュニティなら「お耳拝借」も堅苦しくなくできるのでは、と思ったのです。
*代官山にある「奈良県代官山iスタジオ」で2006年5月11日に行われたイベント。
実際にはどのように応募されたのですか?
松田:web上のフォーマットを使って、メールで書類を書きました。書類を書くのにかかった時間は、多分、1時間か2時間・・・。どうやったら私の活動内容を分かりやすく伝えられるかに細心の注意を配りました。また、なるべく「福祉」っぽい活動に見えないような文章にするのに頭をひねりました。
Q:応募した後の気持ちはどんな感じでしたか。
松田:ドキドキしました。これでダメだったら悲しいな~、でも、採用されちゃったら人前で話しするのか、やれるのかなー、と。2つのドキドキでしたね。
Q:「街の先生」として授業を持つことに決まった時は、どのような心境でしたか。
松田:おおおー。やったー!!いやー、どーしよー。でも、分かってくれる人がいてよかった~
Q:授業の内容はどのように決めていきましたか?
松田:私の中の構想が曖昧なまま打ち合わせをしてもらい、ご迷惑をかけました。
[授業は一緒に作り上げていくものですから、全く大丈夫です!byシブヤ大学スタッフ]
当日は音声ガイド付きの映画上映をするのですが、そのためのガイドをまず作りました。それから、自分が伝えたいことをとにかく紙に書き出しました。
授業の教室となるケアコミュニティ・美竹の丘を下見された時はいかがでしたか?
松田:想像していたものとは全く違う、近代的な設備と建物に汗が噴き出しました。私は学生の時も学級委員長止まりで生徒会長など華々しいことをやってきたことがなく、大人数の前で話すような性分ではないので、ちょっと尻込みをしました。でも、心の準備にはなったので行ってよかったです。
Q:「街の先生」になることを伝えた時、周囲の反響はいかがでしたか。
松田:とっても喜んでいただきました。最初で最後の晴れ舞台と思いましたので、BCCメールなどで知人に告知したのですが、申し込んでくれた方も結構いました。福岡で教師をしている母は当日来ることが出来ないのをとても残念がっていましたが、人前で喋るプロとして私にアドバイスをくれました。
Q:ところで、松田さんが音声ガイドの活動をはじめるきっかけ、視覚障害者の映画鑑賞環境を整える活動をしているボランティア団体であるシティライツに参加するきっかけとなったのは何でしたか。
松田:字幕翻訳の学校に1年通ったのですが、そこで学んだことをすぐに活かせる場所を探していた時にインターネットでシティライツを見つけました。英語の字幕翻訳と、映画の画面が見えない人に場面を翻訳するのは似ているな、と。映画が大好きなのでそれに関わることなら長続きすると思ったのも、参加する要素でした。
Q:音声ガイドの大変さ、そして楽しさ、やりがいはどんなところですか?
松田:大変なのは時間との戦い。だいたい締め切りがありますから。 でも、制作自体は楽しい作業です。自分の好きなシーンをうまく表現できた時などはうきうきします。 初めは、これは目の不自由な人達にとって本当に必要なことのか、もしかしたら自分の一方的な行為なのかもしれない、とも思いました。けれど、視覚障害者から鑑賞後の感想を頂いたり、「ガイドがなかったら分からなかったよ」、「映画に没頭できるガイドだったよ」といった褒め言葉を頂いた時に、なんとも言えない嬉しさを味わいました。私のやっていることは無駄じゃないんだという実感が持てました。そこが「やりがい」ということなんだと思います。
Q:音声ガイド付きの映画鑑賞方法とは、具体的にはどのようなものですか?
松田:2つのやり方があります。
まず1つは、ガイド原稿を作成してナレーターが録音して、上映時に画面との同期あわせをしながらナレーションを流すタイプ。何度も繰り返し同じシーンを見る必要があるので、既にDVD等が発売されている作品か、バリアフリー興行のために配給側が公開前作品の台本やビデオを貸してくれる場合に限ります。
通常の最新作は劇場で巻き戻してもらうわけにはいきませんので、この方法を用いることが出来ません。
けれど、最新作を観たいと思う気持ちは視覚障害者側も一緒です。そこで私たちは映画館にお願いして映写室をお借りして、FM送信機のマイクを通じて映写室の窓からライブで実況中継的にガイドを付けるということをはじめました。鑑賞側はFMラジオを持って来て周波数を合わせれば、イヤホンを通じてライブガイドが聴けるという仕組みです。(この場合でも事前に3~4回観ておく必要があるのですが、今では映画館との関係性もできて事前準備の分は無料にしてくれるところもあります。)私が観ているものをその場で伝えていく、これが2番目の方法「ライブガイド」です。
ただし、この方法は私の個性を知りつつ楽しんでもらえるサークル行事としては楽しいものですが、1つ目の方法のようにオフィシャルなものではないです。
今回の授業でお聞かせしたのは、1と2の方法の複合型です。DVDから事前に原稿は書き起こしますが事前に収録はせず、当日ライブでナレーションを行ったのです。本格的に行う場合は収録・編集・本番で同期あわせというプロセスを経るのですが、それは大変時間がかかるプロセスのため、今回は複合型を採用しました。
渋谷で視覚障害者が映画を観る取り組みに協力している映画館はどれくらいあるのでしょうか。
松田:劇場自体が取り組んでいるところは多分、ありません。視覚障害者が映画を観るということ自体、ほとんど想定されていないと思います。時々シティライツでも渋谷で鑑賞会をしますが、渋谷は人気がありません。交通バリアがすごいからです。土日の渋谷は人だらけですから。比較的駅から遠い場所にあるという理由もあります。映画館の数も多いし、渋谷でしかやっていない映画もたくさんあって、観たがる人も多いのですが・・。 渋谷の映画館さんに協力してもらえるような関係ができたらいいな、と思ってそのような新しい活動も現在計画中です。
| Q:
実際に授業を行って、いかがでしたか? 松田:皆さんからの反応で嬉しかったのが、「音声ガイドがついたら映画が最初より分かった」と言ってもらえたこと。授業中にマイクを向けたら皆さん率直な意見をくださったこと。参加者の方は皆、自分で楽しむ術を知っている人達だと感じ、こういう雰囲気が伝播すると素晴らしい、と感じました。 |
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授業では、最初に映画を音声だけで見て、次に音声ガイドを付けて、最後に(映像も流した状態で)普通に映画を見る、というように実際の音声ガイドの体験を提供されていましたね。参加者の方から「エンターテイメント性がある授業のおかげで楽しく受講することができ、全く何も知らなかった自分でもすっと入れて、気づくきっかけとしてとても良かった」との声もありました。
松田: 授業をするにあたっては、まずは参加者の方に「見えない人が観るってどういうこと?」と不思議に思って、いっぱい疑問を持ってもらいたいと思いました。そして、知ってもらえて、飽きない授業。授業を受けることで「映画の音声ガイド」という新しい分野に興味を持っていただければと。
「視覚障害者を特別視している自分に気が付いた」とおっしゃっていただいたことは、そのような気づきの場になる授業が出来てよかったと思いました。実際の音声ガイドの鑑賞者である視覚障害者の女性にも授業に参加していただいたのですが、当日の授業内で参加者がその方の意見をお聞きしたり、もっとコミュニケーションが出来たら良かったのですが、ちょっと準備不足でできませんでした。そこが心残りです。また、大勢の人を前に話すことの難しさ、オフィシャルな場で喋ることの責任の重さも現場で実感しました。
余談ですが、当日の授業には父も参加してくれたのですが、一番身近で一番伝えるのが難しかった人に見てもらえてよかったです。
最後に、これから街の先生として授業をされる方へ、アドバイスをお願いします。
松田:(授業の)「掴み」は難しいよ! でも、これから「街の先生」に応募しようかと悩んでいる人がいたら、「自分にもやれるんじゃないかな」と思ったら、絶対応募してみたほうがいいと思います。怖いところではありませんでした。。。
--はい、そんなに怖いところでありません(笑)。ので、読者の皆さんの中で「街の先生として授業を持ちたい!」という方がいましたら是非ご応募ください(街の先生募集へ)。
--松田さん、貴重なお話をありがとうございました!!



